「自発型オープンデザインシステム」が9月21日から利用可能になりました。このシステムは従来設置されていたCAD教室システムを全面的に入れ替え,新たに設置された情報システムです。
このSPODシステムは、オープンな教育環境のコアとなるシステムです。このシステムにより次の環境を構築しています。
「双方向教育」
インターネットを駆使した双方向性の高い教育環境
「自発的デザイン学習」
自発的な問題解決能力が養われるデザイン学習環境
「実装/模擬実験」
コンピュータを利用した各種の実装実験やシミュレーションが行える環境
このシステムは、2教室(OD1教室、OD2教室)とサーバ室にまたがって設置する工学部共同利用設備であり、11学科約5700名の学生を対象とする年間約60科目の演習・実習の授業に使用します。
授業使用以外の時間は学生が自由に利用できるオープン利用の運用を行い、さらにインターネットに常時接続することにより自宅や研究室からのアクセスも可能となっています。
このシステムが工学部における教育や学習に利用されることにより、次の効果を期待しています。
● Webベースのe-Learningシステムがもつ教育の双方向性を生かすことにより自発的な学習を促すこと。
● 機械設計から建築設計、情報システムの設計までを対象とする専門性に応じたデザイン学習の場を提供し専門性の高い教育効果をあげること。
● さらに模擬実験と実装実験の機会を与えることによりデザイン学習の‘体験的'側面での教育の質を向上させること。
ハードウェアの構成
SPODシステムは、8台のサーバと274台のクライアントPCをギガビットのネットワークで結合し、負荷の分散化と高速化を図る構成になっています。
サーバは、WebサービスとMailサービス用のインターネットサーバ2台、ユーザ個人領域とWindows利用時の共通データ領域を提供するファイルサーバ1台、サーバの統括および認証サーバの機能を持たせる管理サーバ1台、Linux利用時の個人領域と共有データ領域を提供する常時運転Linuxサーバ1台、システム権限演習用に主なサーバプログラムを導入/設置するためのイントラネット検証Linuxサーバ2台、e-Learningシステム運用のためのラーニングシステム用サーバ1台を設置しています。
このシステムは「双方向教育」「自発的デザイン学習」を推進するため、構内FDDIネットワークやインターネット、公衆回線と接続しています。したがって、セキュリティも十分に考慮しています。ファイアウォールを設けるとともに各サーバや接続形態でもセキュリティが考慮されています。
機械設計から、建築設計、情報システム設計の教育を実施するため学生用PCには高い処理性能と大画面の表示が求められます。18インチ液晶ディスプレイを組み合わせたIBM
IntelliStation E Proシステム装置はこの要件を十分満たしています。
このシステムを利用した教育を実施する際には、各種の出力を行えることが必要となります。デザイン教育の際に必要となる大図面出力に対応するため、各教室に1台ずつA0サイズのカラー出力を行えるA0カラーインクジェットプロッタを設置しています。さらに、大量のプリンタ出力に対応するため各教室8台(内1台カラープリンタ)にレーザプリンタも設置しています。
以上のシステム装置により、「双方向教育」「自発的デザイン教育」「実装/模擬実験」を特徴とする環境が実現されています。
ソフトウェアの構成
サーバ8台、PC274台(先生用2台、表示操作用2台、学生用270台(OD1教室120台、OD2教室150台))から構成されるSPODシステムを管理するため、次のような機能を持つソフトウェアがサーバ群に導入されています。
● ドメイン、ユーザ、ライセンスなどの認証、アクセス権限やログの管理、プリンタ管理など
● クライアントへのソフト配布、クライアント環境の復元、データ保護など
● クライアントとサーバのウィルス対策など
● 講義(教育)支援ソフト:先生用PC画面の学生用PCへの配信、学生用PCの状況把握など
● ラーニングシステム:授業支援と個別学習の両方を支援するe-Learningプラットフォーム
● e-Learning用の教材コンテンツや学習記録データを管理するデータベース
一方、学生用のPCでは、WindowsとLinuxの基本ソフトウェア(OS)を切換えて使うことができ、約60種類のアプリケーションソフトウェアを使うことができます。それらは大きく分けて、情報リテラシー教育を目的としたものと、専門的なデザイン教育やシミュレーションを目的としたソフトウェアに分けることができます。それらの主なものは次の通りです。
<情報リテラシー教育を目的としたソフトウェア>
工学部専門教育に必要な情報技術リテラシー教育を行うために、それぞれの分野で標準的となっている次のようなソフトウェアが導入されています。
● ワープロ、表計算、プレゼンテーション用の統合Officeソフトウェアとして、MS
Office Pro(Windows用)とStarSuite6.0(Linux用)。
● 科学技術用プログラム言語としてFortran。
● ホームページ作成支援としてDreamweaver、 PDFフォーマットの電子文書作成のためにAcrobat、画像編集支援のためにPhotoShop
Elementsと Pa intShop Pro。
● 各種図形を含む技術文書作成支援のためにMS Viso Standard。
これらのソフトウェアは、それぞれの適用分野で標準的に使われているソフトウェアであり、また工学の専門性にも配慮したので、学生が授業や自発的学習の際に役立てるだけでなくに、専門課程における卒論やレポート執筆に役立つ技術を修得することが出きます。さらに、プレゼンテーション能力育成にも役に立ちます。
<デザイン教育およびシミュレーション用ソフトウェア>
デザイン教育および実装/模擬実験を行うのに必要なソフトウェアは、業界標準であることと機能を考慮して導入しています。
● 各種のデータ解析のためのソフトウェアとして、MATLAB Simulinkは工業製品の設計に役に立ちます。
● 機械設計や電機設計支援ツールとして用いる2次元CADソフトウェアは、AutoCAD
LT, AutoCAD2000およびCADPAC Fusionを用意しています。さらに3次元CADソフトウェアとしてCATIAも導入しています。
● 情報システム開発の教育や学習のためには、開発環境を用意しています。MS
Visual Stuio .NETは、Visual Basic, Visual C++などの言語を用いたプログラム開発環境を提供するソフトウェアです。また、JBuilder/EnterpriseはJava言語を用いた分散情報システムの開発環境を提供するソフトウェアです。
● LSI設計のための電子回路開発設計の支援を目的として導入されているVHDL・FPGAシステムは、VHDL言語による回路設計の支援や検証を行えるシステムです。さらにOrcad-PSPICEは、電子回路のシミュレーションを行うための標準的なソフトウェアです。
SPODシステムでは、これらのソフトウェアを広い液晶画面を持つ高性能のPC上で利用できます。機械設計から建築設計、情報システム設計までを対象とする専門性に応じたデザイン教育が可能となっているので、専門性の高い設計技術を修得できます。さらにこれらのソフトウェアは、各分野での業界標準として用いられているので、このシステムでの使用経験を積むことにより、卒業後も社会で十分通用する実力をつけることができます。
また、VHDL・FPGAシステムをもちいた教育カリキュラムにより、LSI設計の基礎から特定用途向LSIまでの高度なLSI設計技術の修得が可能となるので、この分野での専門的技術者としての力量を備えることも可能になります。特に、シミュレーション実験もできるので、デザイン学習の‘体験的’側面の教育にも使えます。
SPODシステムには、e-Learningシステムも導入されるので、自発的にデザイン学習を行うことも可能となり、授業時間以外でも各種ソフトウェアが自発的に使用でき学習効果をあげることが期待されます。
 

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